- 曲名
- 最愛の地 / Lupang Hinirang / Chosen Land
- 作詞
- ホセ・パルマ / Jose Palma
- 作曲
- ジュリアン・フェリペ / Julian Felipe
- 採用時期
- 1898年
フィリピン国歌『最愛の地』(Lupang Hinirang / Chosen Land)解説
フィリピン国歌は、1898年にジュリアン・フェリペ(Julian Felipe)によって作曲され、1899年にホセ・パルマ(Jose Palma)という詩人によってスペイン語の詞がつけられました。
国歌が作曲された経緯は、フィリピンのスペインからの独立宣言に備えてエミリオ・アギナルド将軍が、行進曲の作曲をジュリアン・フェリペに依頼したことから始まります。
1898年6月11日、フィリピン独立宣言の前日(フィリピン第一次共和制 / First Philippine Republic)に、その行進曲「Marcha Filipina Magdalo」(後に「Marcha Nacional Filipina」(Philippine National March)へと曲名変更)が国歌として採用。1898年6月12日に独立宣言がなされた時、初めて演奏されています。
1899年8月、若き詩人ホセ・パルマ(Jose Palma)が、「Filipinas」というスペイン語の詩を書き、そのスペイン語の詩がフィリピン国歌の歌詞となりました。
1920年代には、歌いやすくするため、4/4の拍子に変えられ、キーは当初は最初のハ長調からGへと変更されています。
1920年代、フィリピン国家の象徴の利用を禁止する法律が廃止され、アメリカ植民地の政府は、スペイン語から英語へと歌詞を翻訳することに決めました。
最初の英語への翻訳詩は、当時、有名な詩人だったフィリピン大学のパス・マルケス・ベニーテス(Paz Marquez Benitez)によって書かれました。
しかし、最も人気があった英語への翻訳は、カミーロ・オシアス上院議員(Camilo Osías)とアメリカ人のメアリー・A・レーン(Mary A. Lane)によるもので、1938年にフィリピン議会によって正式に採用されました。
1940年代には、タガログ語への翻訳が試みられるようになり、最も人気があった翻訳は、ジュリアン・クルース・バルマセダ(Julian Cruz Balmaceda)とイルデフォンソ・サントス(Ildefonso Santos)とフランシスコ・コバロ(Francisco Caballo)による「O Sintang Lupa」(O Beloved Land)でした。
そして、1948年に「O Sintang Lupa」が国歌として承認されました。
マグサイサイ大統領時代の1956年5月26日、グレゴリオ・ヘルナンデス教育長官(Gregorio Hernandez)はタガログ語の歌詞を修正する権限を作り、フィリピン国歌「Lupang Hinirang」は、ピリピーノ語で歌われるようになりました。
1960年代には、フェリペ・パディーリャ・デ・レオン(Felipe Padilla De Leon)によってマイナーな改訂がなされ、その改訂版が今日に至っています。
1998年の新国家象徴法(a new national symbols law)によって、スペイン語でもなく英語でもない、フィリピン語による歌詞が確認されています。
スペイン語→英語→ピリピーノ語→フィリピン語という歌詞の変遷に、フィリピンの歴史が浮き彫りにされています。
ところで、フィリピン国歌「Lupang Hinirang」(フィリピン語)は、英語では「Beloved Land」と訳され、日本語でも「最愛の地」と訳されることがあります。
しかし、これは勘違いによる誤訳と言われています。フィリピン語の「Lupang Hinirang」を英語に訳せば「Chosen Land」であり、日本語に訳せば「選ばれた地」です。
ところが、もともとスペイン語で書かれた詩「Filipinas」の最初の一行「Tierra adorada」が、
「愛された土地」という意味であったため、「Beloved Land」つまり「最愛の地」と訳されてきた経緯があります。
ただし、フィリピンでもフィリピン語歌詞の最初の一行目が「Bayang Magiliw」(愛された土地)とあることから、フィリピン国歌「Lupang Hinirang」は、便宜的に「Bayang Magiliw」と呼ばれることもあります。
フィリピン国歌「最愛の地 / Lupang Hinirang / Chosen Land」の歌詞
フィリピン語Lupang Hinirang |
英語訳:Chosen Land |
日本語訳( 大意):最愛の地 |
---|---|---|
Bayang magiliw
Lupang Hinirang,
Sa dagat at bundok,
Ang kislap ng watawat mo’y
Lupa ng araw, ng luwalhati’t pagsinta, |
Land of the morning,
Land dear and holy,
Even within thy skies and through thy clouds,
Thy banner, dear to all our hearts,
Beautiful land of love, O land of light, |
朝の国 炎のように燃える太陽の子 |
フィリピンの国歌『最愛の地』(Lupang Hinirang)の視聴(動画ファイル)
合唱バージョンです。
合唱バージョンです。
フィリピンの概要
- 正式国名
- フィリピン共和国 / Republika ng Pilipinas (レプブリカ ナン ピリピーナス) / Republic of the Philippines
- 独立
- アメリカ合衆国から1946年7月4日に独立
- 首都
- マニラ
- 面積
- 299,404km2
- 人口
- 1億98万1,437人(12位 / 2015年総計)
- 政治体制
- 共和制
大統領を元首とする共和制国家。フィリピンの大統領は国民の直接選挙で選出され、任期は6年。憲法の規定により、再選は禁止されていますが、非常に強い権限を持っています。議会は、元老院(上院)と代議院(下院)の両院制(二院制)。上院は、24議席で任期6年。下院は憲法上250議席以下と規定されており、現在は214議席。任期は3年。 - 民族構成
- マレー系を主とする多民族国家
- 言語
- 国語はフィリピン語 (Filipino)、公用語はフィリピン語と英語。日常的に母語として使われる言語は172にも及ぶそうです。
- 宗教
- キリスト教徒はフィリピンの全人口の90%以上を占めています。カトリックが82.9%(ローマ・カトリック教会が80.9%、アグリパヤンが2%)、エヴァンジェリカルが2.8%、イグレシア・ニ・クリストが2.3%、その他のキリスト教が4.5%。さらにイスラームが5%、その他が1.8%、不明が0.6%、無宗教が0.1%(2000年センサス)
- 通貨
- フィリピン・ペソ(PHP)