エル・サルバドルの国歌「サルバドルの国歌」(Himno Nacional de El Salvador)は、中央アメリカの小国が、独立の誇りと平和への願い、そして未来への希望を高らかに歌い上げたものです。その力強く、しかしどこか郷愁を帯びたメロディは、国民の心に深く刻まれており、国家としての誇りと不屈の精神を象徴しています。
- 国名
- エル・サルバドル共和国
- 曲名
- 日本語:サルバドルの国歌
スペイン語:Himno Nacional de El Salvador
英語:National Anthem of El Salvador - 採用時期
- 1879年制定、1953年歌詞修正
- 作曲者
- 日本語:フアン・アベルレ(本名:ジョヴァンニ・アベルレ、イタリア出身)
スペイン語:Juan Aberle
英語:Juan Aberle - 作詞者
- 日本語:フアン・ホセ・カニャス
スペイン語:Juan José Cañas
英語:Juan José Cañas - キー (調性)
- 主に変ホ長調で書かれており、明るく壮麗な響きを持っています。堂々とした行進曲風のメロディは、国の威厳と国民の連帯感を表現するのに適しています。
エル・サルバドル国歌の成り立ち
エル・サルバドルの国歌は、19世紀後半のサルバドルの激動期に生まれました。1879年、当時の大統領ラファエル・サルダーニャの時代に、国歌の必要性が高まりました。中央アメリカ諸国の独立運動後の政治的混乱期にあった国内では、国家の統一と安定を求める声が強く、国民の結束を促す象徴として国歌が制定されました。詩人フアン・ホセ・カニャスが作詞を、イタリア出身の音楽家フアン・アベルレ(本名:ジョヴァンニ・アベルレ)が作曲を担当しました。
カニャスは外交官でもあり、彼の歌詞には、スペインからの独立戦争の記憶と、未来への強い願望が込められています。一方、アベルレはクラシック音楽の豊かな背景を持ち、エル・サルバドルの音楽教育に大きな影響を与えた人物です。彼の壮麗で力強いメロディは、イタリアの伝統音楽の影響を受けつつ、国家の威厳と未来への希望を感動的に表現しています。
この国歌は、1879年9月15日の独立記念日に初めて公式に演奏されました。その後、1953年に歌詞の一部が修正され、より平和的なメッセージが強調される形となりました。これは、過去の内戦や社会的な混乱を経験したサルバドルが、国民融和と安定を強く願うようになった歴史的背景を反映しています。
エル・サルバドル国歌の歌詞解説
エル・サルバドル国歌の歌詞は、サルバドル国民の自由への熱望、平和への誓い、そして祖国への深い愛情を力強く歌い上げています。通常、合唱と第一節、そして場合によっては第二節が歌われます。なお、スポーツ等の催事や外交式典では、最初のコーラスのみが演奏・歌唱されるのが一般的です。
| スペイン語 (原語) | 英語訳 (公式訳詞 “National Anthem of El Salvador”) | 日本語訳 (試訳) |
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Coro Saludemos la Patria orgullosos De hijos suyos poderte llamar; Y juremos la vida gloriosa De un eterno porvenir, sin igual. Y juremos la vida gloriosa De un eterno porvenir, sin igual. |
Chorus Let us greet the Fatherland, proud to be able to call ourselves her sons; And let us swear the glorious life Of an eternal, unequaled future. And let us swear the glorious life Of an eternal, unequaled future. |
合唱 誇り高く祖国に挨拶しよう その子と名乗れることを そして栄光ある生を誓おう 比類なき永遠の未来のために そして栄光ある生を誓おう 比類なき永遠の未来のために |
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I De la paz en la dicha suprema, Siempre noble gozó El Salvador; Hoy la luz de la gloriosa diadema Ha tejido, cual mágico esplendor. Ha cubierto de nieve la cima Y el fulgor de su escudo de amor, Desde el cielo nos baña y nos rima Con la voz de tu noble clamor. |
I Of the supreme bliss of peace, El Salvador has always nobly enjoyed; Today the light of the glorious diadem Has been woven, like a magical splendor. It has covered the summit with snow And the brilliance of its shield of love, From heaven it bathes us and rhymes us With the voice of your noble clamour. |
第一節 最高の平和の喜びに エル・サルバドルは常に高貴に恵まれてきた 今日、栄光の王冠の光は 魔法のような輝きで織りなされた 頂を雪で覆い 愛の盾の輝きは 天から私たちを照らし、響かせる あなたの高貴な叫びの声と共に |
エル・サルバドル国歌の歌詞に込められた意味
- 「誇り高く祖国に挨拶しよう」: 国歌の冒頭は、サルバドル国民が自国に対して抱く強い誇りと、国を愛する気持ちを呼びかけます。
- 「栄光ある生を誓おう」「他に類を見ない永遠の未来のために」: このフレーズは、単なる生きる喜びではなく、祖国の繁栄と発展に貢献するという国民の強い決意と、明るい未来への揺るぎない希望を表現しています。
- 「最高の平和の喜びにエル・サルバドルは常に高貴に恵まれてきた」: 過去の苦難にもかかわらず、平和と自由を尊んできたサルバドルの歴史を称え、平和が国民にとって最高の価値であることを示唆しています。
- 「栄光の王冠の光」「愛の盾の輝き」: これは、国家の主権と国民が守り抜くべき大切なものを象徴しています。神聖な光が国を照らし、守護するイメージが描かれています。
音楽的特徴と関連情報
エル・サルバドル国歌は、その荘厳な曲調と、歌いやすいメロディが特徴です。行進曲風のリズムは、国民の連帯感を高め、士気を鼓舞します。特に、合唱部分の力強い高まりは、聴く者に深い感動を与えます。
楽譜・MIDIデータ、公式音源
この国歌の楽譜やMIDIデータは、以下の信頼できる外部サイトで入手できます。(外部リンク、別ウィンドウで開きます)
エルサルバドル共和国の国歌の視聴
オーケストラによる演奏バージョン。
エレキベースのタッピング奏法による演奏バージョン。
合唱バージョン。
文化的影響/エピソード
エル・サルバドルの国歌は、国民にとって非常に大切な存在です。学校教育の場では、子供たちが国歌の意味を学び、愛国心を育むための重要な教材とされています。国歌は学校で毎朝斉唱され、若い世代に愛国心を育む大切な機会とされています。また、スポーツの国際大会でエル・サルバドルの代表選手たちが国歌を歌う姿は、国民に大きな感動と勇気を与えています。さらに、国の公式行事や記念式典でも必ず演奏され、国民の団結と誇りを深める重要な役割を担っています。
1953年の歌詞修正は、サルバドルの歴史において特筆すべき出来事です。オリジナルの歌詞には、軍事的な表現やスペインからの独立戦争における「敵」への言及が多く含まれていましたが、長年にわたる内戦(特に20世紀後半の内戦)の経験を経て、国民の間で平和と融和を求める機運が高まりました。この修正では、好戦的なフレーズが削除され、「平和」や「希望」といったメッセージがより前面に出るようになりました。これにより、国歌は過去の対立ではなく、未来への調和と国民の団結を促す象徴としての役割を強めたのです。
結び
エル・サルバドル国歌は、その美しく力強いメロディと、祖国への深い愛情を歌い上げた歌詞を通じて、国民に連帯感と誇りをもたらしています。独立の歴史、平和への願い、そして未来への希望が込められたこの歌は、エル・サルバドルという国の魂そのものと言えるでしょう。この国歌に耳を傾けることで、サルバドルの歴史と文化、そして国民の温かい心を感じ取ることができるはずです。
エル・サルバドルの概要
- 正式名称
- 日本語:エル・サルバドル共和国
スペイン語:República de El Salvador
英語:Republic of El Salvador - 首都
- 日本語:サンサルバドル
スペイン語:San Salvador
英語:San Salvador - 独立年
- 1821年9月15日(スペインからの独立)
- 面積
- 約21,041平方キロメートル
- 人口
- 約630万人(2023年時点)
- 公用語
- スペイン語
- 民族
- メスティソ、白人、先住民など
- 宗教
- カトリック教徒が多数
- 通貨
- アメリカ・ドル (USD) ※2001年より







